商標・知財コラム:首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

「SAKE」は国際的に通じる用語へ
=日本酒の輸出量拡大中=

 購読紙を広げたら、”「SAKE」米国ほろ酔い”の見出しで、日本酒の米国への輸出量が大幅に増加し、米国でも現地の酒蔵が仕込みに入って、米国人好みの日本酒の増加が期待されているとあった(23.5.1讀賣)。
 アメリカでも、日本酒が「SAKE」として通じているようだ。ニース協定の国際分類アルファベット順一覧表を開いてみたら、33類に「Sake」が登載されている。そして、類似商品・役務審査基準では「清酒」と訳されて、対応関係にある。

 以下は、私の「SAKE」に関する思い出である。
 1980年11月ニース協定第13回専門家会合に出席した。当時我が国は協定には未加盟であり、オブザーバーとして、気軽に参加した。アルファベット順一覧表改正案に、我が国固有商品で唯一の33類「Sake」があったが、我が国が提案したものではなかった。会期半ばの頃、これに対して、ノールウェー代表が「Too specific」として削除提案をした。
 「Sake」は日本の重要な商品で、しかも、決して、「Too specific」ではない旨、大使館の担当者を通じて発言して貰った。そしたら、ポルトガル代表が即座に、「We support」と発言して、反対する意見はなく、「Sake」はリストに残された。当時の施行規則(昭和35年通産省令13号)別表28類には、「酒類」の下に、「清酒、合成清酒、焼ちゅう、あわもり、白酒、直し」が例示されていたからで、私は「Sake」は「酒類」と理解していた。

 前掲記事の「SAKE」は日本酒と対応するようだが、そして、「清酒」は含まれるが、訳としてピッタリかは検討を要しよう。
 因みに、日本酒輸出2022年度実績では、金額・数量ともに過去最高で、輸出金額第1位は中国、第2位はアメリカで、第3位の香港を合わせると67.8%を占めているとある(日本酒造組合中央会サイト)とある。
 それにしても、あれから約40年を経て、「SAKE」は立派な国際用語となったということだろう。

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士
工藤 莞司

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工藤 莞司 先生
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