商標・知財コラム:首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

指定商品・役務の意義について解釈基準を示した判例
(最高裁平成21年(行ヒ)第217号 平成23年12月20日 民集第65巻9号3568頁)

判 旨
(1) 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である。

(2) 政令別表第35類は、その名称を「広告、事業の管理又は運営及び事務処理」とするところ、上記区分に属するとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質に加え、本件商標登録の出願時に用いられていた国際分類(第7版)を構成する類別表注釈が、第35類に属する役務について、「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること、「商品の販売に関する情報の提供」は、省令別表第35類中の同区分に属する役務の3おいて、「経営の診断及び指導」、「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ、類似商品・役務審査基準においても、これらと同一の類似群に属するとされていることからすれば、「商品の販売に関する情報の提供」は、「経営の診断及び指導」、「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と同様に、商業等に従事する企業の管理、運営等を援助する性質を有する役務であるといえる。このことに、「商品の販売に関する情報の提供」という文言を併せて考慮すれば、省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると、・・・商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは、「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。

コメント
 本件事案では、本件指定役務「商品の販売に関する情報の提供」の意義、即ち、提供先が最終消費者か否かで争われたもので、最高裁は、政令別表の区分の名称、第35類に属する例示役務、省令別表第35類に例示された役務と本件役務との横並び、国際分類の類別表注釈及び特許庁編「類似商品・役務審査基準」を考慮して解釈することを示したものである。目新しい点はなく、実務的に普通に行われていることを掲げたもので、実務を追認したともいえる。内部基準で法令ではない特許庁編「類似商品・役務審査基準」をも含めているが、実務上の役割を最高裁も認めたと言えよう。
 そして、本件判例は、適用される国際分類、政令別表、省令別表及び「類似商品・役務審査基準」は当該出願の出願時のものであることを明示した。
 省令別表等未例示の商品・役務もこの基準に準じて、所属区分等を検討し、判断することになる。本件判例は最高裁民事判例集に登載されているが、先に紹介した拙稿「商標法の判例と実務上の要点等」(パテント2019.Vol.72No.5p6以下)には未掲載であった。

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士
工藤 莞司

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