商標・知財コラム:土肥 一史 先生COLUMN

一橋大学 名誉教授・弁護士 土肥 一史 先生

商品形態の保護

不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争の商品・営業主体混同惹起行為で求められる商品等表示性は、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」であることが必要とされている。このうち、「その他の商品又は営業を表示するもの」の実務上の意義は大きく、限定列挙主義を採用する不正競争防止法において、混同惹起類型での一般条項としての機能を果たしてきた。

商特に、商品容器又は包装の模倣の他に、商品の形態の模倣によって惹起される混同行為への規制は、その典型である。取引者・需要者の購買意識を喚起するには、商品の容器又は包装を工夫するか、あるいは商品の形態自体に工夫をすることが考えられるが、前者についてだけでなく、後者についても不正競争性が認められたことは必然というほかない。それは米国連邦商標制度の下でのトレードドレスの理論や、ドイツ不正競争防止法(UWG)の一般条項の下での競業上の特異性の理論の展開をみても承認されよう。

わが国で商品形態の模倣による商品・営業主体混同惹起行為が判例上認定されたのは、昭和48年3月9日の東京地裁のナイロール眼鏡枠事件判決(無体集5巻1号42頁)を嚆矢とする。商品形態が1号による保護を受けるためには、規定上明らかなように、周知性と混同のおそれの存在が求められるが、前提として当該商品形態の特異性が必要とされる。特異性というのは、当該商品が属する範疇において、一般的な形態の中でありふれたものではないことを意味し、一般的な形態からの距離の大きさで判断される。

商品は市場に導入される際にドレスアップされる。米国法でいうトレードドレスの保護は商品容器から、商品形態にまで広げられている。商品形態の保護においては、生来的な識別性を有することの他に、セカンダリーミーニングを獲得していることの立証が必要かで議論もあったが、Two Pesos最高裁判決で生来的識別性の立証で足りるとされた。

わが国の1号類型の不正競争においても、商品形態の特異性が認められることの他に、当該商品形態が出所表示機能を果たしていることが必要であり、その意味においてセカンダリーミーニングは必要であるが、原告は周知性と混同のおそれの立証で足り、セカンダリーミーニングは欠けているという被告の側の反証で問題とすべきであろう。

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