商標・知財コラム:首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

新しいタイプの商標を巡る最新情報
=知財高裁裁判例、省令改正、文献等の紹介=

 新しいタイプの商標について登録が開始されて以来、5年ほどが経過している。この度、初めての知財高裁裁判例が出され、また店舗デザインについては、立体商標として登録可能とする商標法施行規則の一部改正が行われた。専門誌で新しいタイプの商標等について特集が組まれている。以下情報として紹介する。

位置商標の識別性に係る知財高裁の初判断
 指定商品「対流形石油ストーブ」とする位置商標(下図参照)について、拒絶査定がなされ、拒絶査定不服審判でも商標法3条1項3号該当として不成立審決がなされ、知財高裁へ対し提訴されたが、同高裁も、審決を支持したものである。商標法3条2項適用も否定している(令和2年2月12日 知財高裁令和元年(行ケ)第10125号)。
 判決では、位置商標である本願商標を「三つの略輪状の炎の立体的形状」として捉え、本願形状は美感向上のため採用の形状で、暖房効果を高める機能を有すると認定し、商品等の形状表示として3条1項3号該当と判断している。本願の「商標の詳細な説明」に、「・・・3つの略輪状の炎の立体的形状からなる。・・・赤色で示された部分は石油ストーブの燃焼部が燃焼していることを示している。・・・」とある事案である。

店舗デザインに係る商標法施行規則の一部改正
 先日、店舗デザインを立体商標として登録可能とするため、商標法施行規則の一部改正が行われ、①立体商標を実線、破線で書き分けること、②願書に「商標の詳細な説明」の記載を可能とした。本年4月1日から施行される。

新しいタイプの商標の動向、店舗デザインの保護等に係る文献
 パンテント誌や商標懇誌の最新号で、以下の特集が組まれ、是非参考としたい。
『「動き商標」「色彩のみからなる商標」の審査動向』、『「ホログラム商標」「位置商標」の審査動向』、『「音商標」の審査動向』について、弁理士会令和元年度商標委員会が分析している(パテント誌2020年2月号52頁以下)。
 『非伝統的商標における「結合商標の類否」の考え方』(小塚荘一郎学習院大教授)、
「米国における新しいタイプの商標に関する制度について」(井手久美子米国弁護士)、
「店舗デザインの商標制度上の保護について」(横山久芳学習院大教授)、
「店舗の外観・内装の商標制度による保護等に係る検討について」(商標制度企画室)と題した専門家の解説等が公表されている(商標懇誌2020Vol.36 No.118 8頁以下)。
以上

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士
工藤 莞司

メルマガ登録
工藤 莞司 先生
工藤 莞司 先生
バックナンバー
ページTOPへ