雑感・コラム

TOP > 雑感・コラム > パロディか、「面白い恋人」は面白いのか?

パロディか、「面白い恋人」は面白いのか?

◇すこし前に、面白い恋人事件が話題となった。これは、菓子に商標「面白い恋人」を付して使用していた吉本興業等を、登録商標「白い恋人」を有する石屋製菓が商標権侵害及び不正競争防止法に基づき販売差止、廃棄を求めて訴訟を提起した事件である。現存する「シロイコイビト」の称呼を含む商標を検索したところ35件検出され、そのうち29件が権利者「石屋製菓」となっている。

◇実際の商標の使用態様は、下記URLでも確認できるが、「石屋製菓」は、「白い恋人」の文字商標だけでなく、外箱デザインや、菓子を1個ずつ包むビニルパケージ部についても商標権を取得している念の入れようである。
http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/53350759.html

◇しかし、両商標は類似するのか、通常考えると、「面白い恋人」と「白い恋人」は、類似しないとなってしまうと思われる。「面白い恋人」の文字列の中に「白い恋人」が全て含まれてしまうとしても、「面白い恋人」はいわゆる同書同大で一連に書してなり、既成語「面白い」を「面」と「白い」にわざわざ分断する理由もなく、また「面」と「白い恋人」を分断する理由もないはずである。商標に他の著名商標「白い恋人」を含むとしても、「面白い恋人」を分断して考えるのは難しいであろう。また、実際の取引の実情を考慮しても出所混同のおそれが無いと判断されそうなのは、本件がパロディ事件としても騒がれたように、つまりパロディは他人が面白おかしく茶化してやるから、元々「白い恋人」とは無縁の他人による商品と考えるところにもある であろう。

◇「面白い恋人」は本当に面白いのか?面白いと思うのは、「白い恋人」の存在が前提となり、それが実際に使用され、有名になっているからであり、そうでなければ全然面白くない。しかし、フリーライドされ利益を持って行かれたと考える「石屋製菓」はいずれにしても微塵も面白くないのである。文字商標だけでなく、文字が類似しなくともパッケージ全体として真似される「サロンパスVSロマンパス」事件のようなものを避けるため、パッケージ商標等も入念に出願してきているのに、観念、外観、称呼全て似ていないと見えるのである。このような場合、商標権では無力なのか?

◇実は吉本興業が出願した商標「面白い恋人」は、登録商標「白い恋人」が引用され、商標法4条1項11号、つまり類似の理由で拒絶理由が出されているが、最終的には同法4条1項7号の公序良俗違反で拒絶査定されているのである。この7号の公序良俗違反は伝家の宝刀とも言われ、最後の最後に困ったときに特許庁が出す拒絶手段というのであるから、特許庁も本当に困ったのかもしれない。不正競争防止法であればもう少し柔軟な対応はできるであろうが、パロディに関する明確な規定はない。

◇パロディというと著作権法がすぐ思い浮かぶが、現行著作権法にパロディの規定はなく、場合によっては、翻案権や同一性保持権等が問題となることはある。表現の自由が強く認められるとパロディが著作物として認められてくるという傾向が出てくるはずで、これは欧米の方が進んでいるようである。

◇もし、茶化し得の茶化され損で、大きな利益が絡んでくる場合等は、米国等でいわれるフェアユース(公正利用)の法理が有効なのかもしれない。米国の著作権法では、以下の要件を考慮し「フェア・ユース」か否か判断される。著作者が損をするか等については4.の要件が関係してくる。
1.利用の目的および性格(利用が商業的な性格を有するか、または非営利の教育目的であるのかということを含む)
2.著作物の性格
3.著作物全体との関連における利用された部分の量および本質性
4.著作物の潜在的な市場または価値に対して利用が与える効果

◇現在、日本の著作権法には「フェア・ユース」の概念はないが、文化審議会著作権分科会で、日本版フェアユースが導入される方向となってきたとされ、今後の注目を集めるであろし、さらにこれが商標法に飛火しということもあり得ることである。 (當間)

お気軽にご相談ください

電話からのお問い合わせやご相談:03-5296-0033
PCからのお問い合わせやご相談:お問い合わせフォーム
メルマガ登録
ページTOPへ