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商標概念の拡張の中で

◇商標法上の商標概念は、世界的な潮流を見れば拡張を続けている。我が国の商標概念の変遷を見ると、1959年の立法当初から、いわゆる商品における平面商標の時代が続いているが、1990年代以降は、国際調和、世界的趨勢もあり、商標概念は拡張を続けている。

◇平成3年法改正で役務商標制度、平成8年法改正で立体商標制度、団体商標制度、平成17年法改正で地域団体商標制度、平成18年法改正で小売り等役務商標制度が導入されている。

◇そして、いわゆる新商標や非伝統的商標などと呼ばれる商標、「動き」、「ホログラム」、「色彩のみ」、「位置」、「トレードドレス」、「音」、「香り」、「味」、「触覚」等の概念が登場し、日本でも、「音」、「動き」、「位置」等については近々導入をと動き出している。こうなると商標の世界は何でもありで楽しそうな世界に見えてくるが、実際には色々な難問題もあり難航しているというのが実情のように見える。

◇商標とは何かという問いに、商品やサービスの出所識別機能があればよいのではとする答えは、ある意味で商標の本質を言い当てているのかもしれない。しかし、そのような機能を発揮するものは何でも保護してしまえばよいのかというと、現実にはそうはうまくいっておらず、幾つかの壁が存在している。例えば、いわゆる新商標では、特許庁にどのように「音」や「香り」を正確に提出し、それを正確に再現し、公示できるのかという、ある意味テクニカルな面が最も重要で困難な問題を提起していると考えることもできる。何だそんなことでと思うかもしれないが、外国では「音」の商標は音符やグラフの波形などで提出したりしている例が多いが、台湾がやっているような録音した音源の提出が果して良いのか、疑問は尽きない。

◇また、立体商標では、3条2項適用の使用による特別顕著性が現在の実務で登録を付与されるために有効に機能しており、伝家の宝刀のようにみえなくもない。我が国は登録主義を採るとはいえ、平面の伝統的商標から離れていくに従って、本来的な商標から遠ざかり、最後の切り札として使用主義的側面が強まっていくのかもしれない。

◇立体商標では、懐中電灯事件、コーラ飲料の容器事件、乳酸菌飲料の容器事件などに続き、先ごろ肘掛椅子事件の判決で大きな関心をもたれた方は多いであろう。もともと物品の形状そのものは、更新を繰り返すことで半永久的な権利となる立体商標の商標権と、設定登録から20年で消滅する意匠権が重畳した場合、半永久権の立体商標を認めてはおかしいという政策的な調整が重要なポイントにはなっているはずであるが、果して今後どのようになっていくのか、興味は尽きない。 (當間)

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